第4話軽トラック
『軽トラ一台から始まった、鉄くず拾いの旅part3』

私の言葉を聞き終えたあと、
お客さんはしばらく黙って私の顔を見ていた。

怒られるだろうか。
断られるだろうか。
胸の鼓動がうるさいほど鳴り続けていた。

しかし次の瞬間――

「それでいいよ。
積んで、積んで。」

お客さんは、まるで当たり前のように笑いながら言った。

耳を疑った。

「……え? 本当に、いいんですか?」

「いいよ。信用してるから。
売ってくれるって言うなら、それで十分だ。」

その瞬間、全身の力が抜けた。
安堵と驚きと、言葉にできないほどの感謝で胸がいっぱいになった。

あの時の気配、匂い、風の冷たさ、
お客さんの優しい表情――
すべてが今でも鮮明に脳裏に焼き付いている。


■ 初めて“信用”をもらった日

軽トラの荷台に銅板を積みながら、
私は何度も何度も「ありがとうございます」と言った。

本当に、涙が出そうだった。

金属スクラップの仕事は、
「現金払い」が常識だ。

見ず知らずの若い拾い屋に、
しかも資金もないという相手に、
大量の銅を“先渡し”してくれるなんて、普通はあり得ない。

でもこのお客さんは、
そんな私の背中を押してくれた。

「信用」という言葉の重さを、初めて知った日だった。


■ 荷台が沈むほどの銅を積んで走る軽トラ

銅板を積むごとに、軽トラの後ろが沈んでいく。

ギシギシと悲鳴をあげるサスペンション。
ハンドルに伝わる重量。
アクセルを踏み込むと、車体がゆっくり前に動く。

これだけの量が売れれば、
借金も生活も少しは楽になる。

それより何より――
「俺は、ようやく一歩進めたんだ」
という実感が、胸の奥で静かに、しかし確かに燃えていた。


■ この日の出来事が、後の“北商店”の根になる

あの日もし、あのお客さんが断っていたら――
今の私はいなかったかもしれない。

信用してくれる人がいた。
任せてくれる人がいた。
若い拾い屋の話に耳を傾けてくれる人がいた。

その優しさと信頼が、
今も北商店の根っこに息づいている。

私は軽トラックのハンドルを握りしめ、
夕焼けに染まる道を走りながら思った。

「絶対に、この仕事を成功させる。」

その強い決意が、胸の中で固く結ばれた。