── 銅の利益が、生活を立て直す第一歩になった**
銅の屋根を買い取ったあの日、
軽トラに重たい銅板を積んで走りながら、
「この仕事で本当に食っていけるのかもしれない」
そんな小さな光が胸の奥に灯っていた。
だが現実は、甘くなかった。
ちょうどその頃、
私の軽トラックは車検の時期を迎えていた。
「よりによって、なんで今なんだ…」
家にはほとんど貯金がなく、
毎月の生活費と借金返済で手一杯。
車検代を捻出する余裕なんて、どこにもなかった。
この軽トラがなければ仕事ができない。
でも、車検を通す金もない。
本当に、どうしたらいいのかわからなかった。
そんな追い詰められたタイミングで、
銅の買取の利益が手元に残った。
その利益を手にした瞬間、
胸の中で何かがほどけた。
「……これで、車検が通せる。」
利益の半分は、車検代として消えていった。
でも、それでよかった。
軽トラさえあれば、まだ走れる。
まだ仕事ができる。
まだ家族を守れる。
残ったお金は、借金返済とほんのわずかな生活費に回した。
贅沢なんてできない。
でも、
「生きるための最低限」
が手に入っただけで、あの日の私は救われた。
あのとき銅を譲ってくれたお客さんは、
今でも私に良くしてくれている。
あの人の一言――
「それでいいよ、積んで積んで」
がなければ、私は車検を通せなかった。
車検が通せなければ、
スクラップを集め続けることもできなかった。
仕事を続けられたのは、
あの人の“信用”と“優しさ”があったからだ。
そのご縁は十年以上経った今でも続き、
私の商売の原点としてずっと心に刻まれている。